あの時もそうだった。
あの時といっても実際に体験しているのは、私ではないと思います。
でも確かにあの時もこうやって体を動かしていた。
思考に追いつかれないように。
とにかく振り払おうとしていた。
それでも、あいつらは追いかけて来るんだ。
絶対に辞めない。
永遠に追いかけて来る。
私は逃げることなど出来なかった。
だから、追いつかれないように体を移動させることにした。
結局あいつらは息を切らすこともなく、平然とした顔で私の隣に現れる。
そして、入っていく。
いや、戻っていく。
あいつらは淡々と作業をする。
それが仕事であるし、契約書も交わしている。
書面で交わした覚えはないが、確かにそうだと言っていた。
あいつらはとても真面目なやつだ。
サボることもしないし、不平不満も言わない。
ただ淡々と仕事をこなす。
私は逃げることが出来ない。
しかし誤魔化すことは出来た。
私自身の体を動かすし、移動すること。
実際には座ったまま、寝たままなんてこともあるが、私は動く事であいつらから逃れようとしている。
私も機械になる。
淡々と動作を繰り返すことで、私はあいつらから距離を取るのだ。
それは一時的なものと分かっていながら。
それでも止まることは出来ない。
止まるよりはそちらの方がマシなのだ。
あの時と変わっていなかった。
不安や心配から逃れるためにとにかく動いていた。
体を動かしていた。
でも追いかけて来る。
絶対に歩みは止めないし、辞めることもない。
ずっとずっと距離を取っては追いつかれて。
ぼくもあいつもただ止まらずに、機械のように歩み続けるのだ。