溝井孝司のちゃらんぽらんちゃん。

詩的な日記小説です。児童文学みたいな人が書いてます。

このメッセージをどうぞ受け取ってください

映写機

 目を瞑った。瞼を閉じ、眼球の裏にある映写機をそっと動かし始めた。長いフィルムが巻かれている。どうやら長編映画のようだ。僕は、その場で体育座りをし鑑賞を始めた。僕の眼球の裏にある映写機はいつも自動で動き続ける。そこでは昼夜問わず10歳くらいの男の子が映写機を回し続けている。彼は映画を観ることが好きなのだ。だからずっと回し続けている。僕は男の子がいつの間にか隣にいることに気がついた。彼も体育座りをして映像を眺めた。途中線が入ったり、大きな白い塊が映し出される。フィルムに傷があったり、ゴミが入っているようだ。それでも映像は止まることなく流れ続ける。止まることはなかった。僕の眼球の裏ではいつもこうやって一つの映画が上映されている。しかし、一つと言っていいのかはわからない。複数の物語が同時に進んで行く。年齢や場所や時間は様々だ。ここ数十年前の話や、数十年先の話もある。数百年、数千年ってことも当たり前のように同時に流れている。そんなことを考えていると、すぐに映像を見逃してしまう。巻き戻しは出来ない。またその映像が現れるまで気長に待つしかない。ただ、流れて行くだけだからだ。僕は男の子と二人で映画を観て過ごした。かなりの時間をそこで過ごしていたような気がするが、実際どれくらいの時間が経ったのだろうか。僕はかけてある時計に目を向けた時、鎌倉の家の中に戻っていた。布団の中で横たわり、深く呼吸をした、肩と首を回してほぐした。胸にある"重たさ"は消えていない。今は靄のような状態になっている。眼球がじんわりと沁みてくるような感覚がある。風が吹いていた。ここ数日間の風は少し強引に隙間をかき分けてやってくる。その勢いのまま。家にぶつかると窓が音を立てて揺れた。洗濯物は踊っていた。

 

ベンチ

 僕は通り道にあるベンチだ。旅人が腰掛けるベンチだ。長時間歩き続けた旅人の疲れを癒す。そこにそっと置かれている。誰もが訪れる場所だ。僕は場所なんだ。ベンチという場所。道端に置かれているベンチという空間なんだ。そこに人は訪れる。足を止める。ここは部屋になっている。家のような場所だ。ドアを開けて入ってくる。鍵はかかっていない。誰でも通って行くことが出来るからだ。抜け道のような場所になっている。そこでは時折、路上ライブが行われる。人が集い始め、自分の楽器を奏で歌い踊り始める。いつ始まるかは誰も知らない。自分から始めようとしても始まらない。そこにはリズムがあった。心臓のリズムと似ていたい。心臓のリズムが揃い出すと、人も揃い出す。集まり、お祭りのような空間になる。そのタイミングは誰も知らない。しかし、心臓は知っていた。心臓のリズムが揃い始めた時、人は自然と体が動き始める。そしてここで始まる。またお祭りが始まるんだ。

 

旅人

「あなたのステージはもうここにはありませんよ」

「そんなことありません!今日ここで歌うために来たんですから。予約だってしました。ほら見てください。名前だって書いてあります」

「いいえ、あなたの歌うステージはもうここではありません。もうあなたのステージではないのです。あなたが一番気づいているでしょう。通知が来ませんでしたか?何度も届いているはずですよ。あなたがここを退いてくれないことには次の人が歌うことが出来ないですからね。あなただけのためのステージではありませんから。そして、もうあなたのステージではないのです。行きなさい。さあ。」

 あなたのステージはもうここではないと思いました。違うのです。変わってしまった。あなた自身がです。そのことに気がついたということです。これまではそうだったかもしれませんが、もう違います。これは旅です。ずっと居座ることは出来ません。あなたは旅人だからです。そして、共に歌う人も変わります、それは良いことであります。もう帰ってくることもありません。その必要はないのです。しかし、帰ってくることも出来ます。辺りは変わってしまうでしょう。人も変化します。しかし、あなた自身はなんら変わらずそこにいるでしょう。そしてあなたはまた旅に出るのです。あなたは旅人だからです。そう書いてあります。ステージと言いましたが、あなたのステージは用意されています。これは必ずです。それがすぐに見つかるとは限らないですが、見つかります。嗅ぎ分けてください。耳を傾けて見てください。あなたの進むべき指針は、胸の中にある。そしていつまでも空にあります。あなたは星だからです。あなた自身が光輝く星なのです。もうコンセプトはいりません。肩書きもいりません。ただ歌いなさい。その名前だけで十分です。説明もいりません。あなたの歌だけで十分なのです。挨拶は歌でしなさい。名刺なんて持たなくて良いのです。あなたは歌で挨拶をする。歌で人と出会う。それがあなたの旅の使命だ。あなたは星にならなくてはいけないのです。旅はそのためにある。出会いもそのためにある。あなたを待っている人がいます。あなたも気づいているかもしれません。そのことを隠さないでください。さあ、いきなさい。あなたのステージが待っていますから。あなたを待っている人がいますから。孤独ではありません。決して一人ではないことを忘れないでください。しかし、独りで向かわなくてはいけません。信じなさい。自分を愛しなさい。あの頃のようにまた歌いなさい。あの頃のようにあなたの歌声を愛しなさい。

 

 

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僕はあなたに向けて書いている。

それは僕に向けて書いている。

 

どちらも一緒。

僕は人を愛しているし、信頼している。

そうやって自分を愛して、信頼している。

 

これはあなたへのメッセージでもあります。

どうぞ、受け取ってください。