溝井孝司のちゃらんぽらんちゃん。

小説のような日記です。児童文学みたいな人が書いてます。

20170619

洗濯物

 落ち着けようとしています。頭頂部が閉じているような感覚があります。上から押し付けられているような感覚です。押し付けられていると言っているので、きっと誰かがそうしているのかもしれません。

 洗濯物を干しました。洗濯機で回していたし、スムーズに出来たのでちょっと嬉しかったんです。だから、洗濯物を干すことにしました。奮い立たせた訳でもありませんでした。ただ、洗濯物を干そうと思ったからそうしたんです。最近は1日1回はキッチンに立ち、食材を切ったり、そういうところから作るのがいいなって思ったりもするんですよ。毎日やろうと目標にしてしまうと辛くなってしまいますが、ちょっとだけ少しやるだけでも気持ちがスッキリして来ます。きっと集中しているんでしょうね。例えば、インターネットですとか、集中して見ててもあまりいいことはないように思うんです。だけど、見てしまいます。終わった後は、頭の中が変に興奮しているようにすら感じます。SNS。これがまた凄いんです。どんなにスクロールしても終わらないんです。いつまでもいつまでも果てしない記事が流れて来ます。洪水です。津波ではありません。自然現象ではないんです。自分から飛び込んでいるんです。どういうことでしょうか。どうしてなのでしょうか。

 

見る

 目が疲れている。じんわりする。目を閉じるとそれがわかる。開いているとよく分からない。それでも見続けるからです。目は見続けている。文字を、映像を。目を閉じても見ている。裏側にある映像。疲れているのは誰。目なのか。私。私は目とは別なのか。目ではない。私は指です。薬指です。右手の薬指。Oの文字にいます。キーボードのOにいます。私は大抵ここにいるのです。喉元から叫び声が聞こえた。狂気的な様子ではなかった。海に向かって叫ぶようなものかもしれない。喉元は歌っている。それは頭まで響いてた。喉元は響かせる。震わせることが出来る。振動を与える役割を果たす。それは声のようでもある。音楽。喉元は音楽なのだ。震わせる。脳みそを。頭頂部を突き抜けて行く。空っぽにする。ただ、音楽が生まれる。声が生まれる。夢と今。今が夢なのだ。夢との接続をする。夢になる。夢自体になった。私は夢だった。夢で生きている。声を聞いている。夢の中で。歌はそうやって振動する。手繰り寄せる。掴んだわけではないと思います。ただ歌っている。振動させている。私は自由ではありません。縛り付けています。とことん私を縛り付けます。私は幾度も脱獄を試みます。何度でもです。辞めることはありません。常習犯です。逃げては捕まり、逃げては捕まりを繰り返します。そのたび、また独房へと舞い戻ります。そう踊りながら戻ってくるのです。グローブとボールを持って。壁当てをします。リズムを刻みます。僕は小学生の頃友達とテニスコートで壁当てをしていた。あれはリズムだった。あそこには音楽があった。角度や強弱、高低が存在していたい。それを自由に操ることだった。自らコントロールしていた。コンクリートの地面。あのテニスコートはコンクリートの地面でした。だけど、懸命に生きていました。パン、パン、パン。あの音は太鼓のようでした。僕は大太鼓を叩いた。一音一音を意識した。周りの音楽を聴き、タイミングを図った。一音の存在感に興奮していた。低い音に喜びを覚えた。大太鼓を叩いていた。ドン、ドン、ドン。ドンドン、ドン、ドン。校庭には音楽が鳴っていた。演奏隊の音楽。あれは大脱走だった。脱獄の音楽だった。

 

名前

 「天気がいい。今日は天気がいいみたいですよ。気温が上がるみたいですよ」と男が言った。この男は名前を名乗ろうとしない。不覚にも僕はこの男を家の中に上げてしまった。「天気がいいから洗濯物を干しましょう」と言って、洗濯をはじめた。それは構わないし、むしろありがたいことでもあった。問題なのはこいつはなぜ家の中をうろついているのだろうかということだ。アトリエとして使っている奥の部屋でベンチに腰掛けている。窓を開けて、鎌倉の街を眺めている。人の声を聞いているようだ。「声が聞こえますね。声が聞こえます」そういうと男は目を閉じた。呼吸をしているようだった。呼吸をしているようだなんておかしなことを僕は言っている。僕だって呼吸しているし、当たり前のことだ。男から呼吸が聞こえたから言った。確かに聞こえたのだ。呼吸が。「私は肺を使っています。腹式呼吸って、胃とか腸とかそういうところまで空気が入っているんですかね。私にはよくわかりませんが、呼吸っていいですよ。タバコを吸う人の気持ちがわかります。あっ、私はタバコを吸いませんのでご安心ください」僕はこの男の不法侵入を許してしまった。しかし、害がないと感じている。名前も聞いていない。名前を聞こうともしない。名前に意味はあるのか。この男に害はない。むしろ僕はこの男がいることで安心しきっている。この男の声を聞きたいとすら思っている。僕は信用してるように感じた。心を許しているように感じた。名前を聞いたら、僕が抱いた安心感は無くなってしまうように思った。僕は名前を聞かなかった。ただ、安心していたからだ。この男に、安心していた。

 

f:id:mizokoji:20170619112712j:plain

灰色の壁が 呼吸した。

灰色の人間 涙した。