溝井孝司のちゃらんぽらんちゃん。

小説のような日記です。児童文学みたいな人が書いてます。

20170725

 全くもって予想というものがつかず、気づけば思いもよらぬ事態に巻き込まれてしまうようであり、それを避けて通ることも出来ず、ただその予測がつかないこの、いままさにこの今の状態にこそ私は不安を抱いており、それが果たしてなんの意味があるのかなど知る由もなく、ただ自分の問題であるとしか片付けることしかできず、これまでもそうしてきたのだからと、そう意固地になっている男がいることを私は知っていました。それはあまりに突然だったので、男はまったく思いもよらぬといった表情でただ、横になりその嵐を過ぎ去るのを待つことしかできず、その嵐が過ぎ去ったからといって、今しっかりと安心して良いものかと疑心暗鬼の日々が続き、結局また嵐はやってきては男の体内を撹乱し、錯乱させ、男は横になり、その繰り返しの人生に嫌気がさし始めていると言っても良いのかもしれません。男は嵐が来ることを望んではいなかったし、もちろん待ちわびてもいなかった。手招きして家にあげようとは思っていなかったし、歓迎をする気持ちなんてこれっぽっちもなかったのだ。それなのに、男は何遍も訪れては、土足で踏みにじられ、荒れ果てていく部屋の中を正気で見ていることはできず、時には怒り散らすこともあるが、大抵は逃げることも出来ず、無気力にただその光景をただただ呆然と眺めているのである。嵐は手を緩めようとしないし、時が来たら何事もなかったようにいなくなるし、その瞬間部屋は元どおりになるのだ。平穏な暮らしが男を待っている。しかし、男は嵐の渦中にいることを忘れてはいけず、嵐が去っている状況でも未だ予断を許さぬ状況が続いているのである。男は紙を持ち出し、何かを描き始めた。描き刻んでいるといった方が良いかもしれない。石に刻み付けるようにただ描き刻んでいた。もちろん嵐は部屋の中を荒らしていたし、その間にもいなくなっているような気さえ男はしていた。それでも何かを、そこにこの状況を描き示さなくてはいけない状況に迫られているようだった。男は依頼されているわけでもないのに、ただ紙に刻みつけた。男が自主的に行ったことだった。誰も男を見ようともしていないし、男が何をしているかも知らなかった。男の家が嵐にさらされていることは外見からでは判断がつかないのだ。男は家から出ることはない。ただ、嵐がやってきては去っていくその時間だけを過ごしている。紙は無造作に床に置かれたままだった。状況は一変したし、いまは嵐はいなくなったと男は思い込んでいる。それが紙を無造作に置かせたし、それをどうこうする気は今の男にとってどうでも良いことだったのだ。男は首を横に曲げた。緊張から体が凝っているような素振りを見せた。男はいま安心しているように見受けられるが、このあと起こることを予測して不安を隠せないような表情をしているようにも見えるのだ。

「どうしたって逃げることはできないのだ」

 男はその言葉だけを度々口にした。それ以外のことは口を開こうとはしない。

「どうしたって逃げることはできないのだ」

 男は一点を見つめてそのことを何遍も繰り返したし、見つめている焦点は全くといっていいほど合っていなかった。男は窓を眺めていたし、閉まり切った窓の外にいるカラスに話しかけていた。カラスはその都度「カア、カア」と声を出したが、男にはその鳴き声は聞こえてはいなかった。聞こえていないかどうかは定かではないのだ。それでも確かに聞こえていなかったし、男は何遍も繰り返した。その度にカラスは鳴いたし、蝉も鳴いた。反応しているように見えたが、男は未だに窓一点を見つめていたし、それは窓の外の家の向こうの、空へ向いているようだったし、男はただ、その一点を探してさまよい歩いているように見えた。男は畳の上に横たわっていたし、動く気配はなかった。しかし男は窓の向こうにある一点をめがけて徘徊していたし、足を止めることはなかった。男は窓の外へ向かって歩き出した。窓の外へ出ると、男はそのまま歩いた。男は一点を歩いていたし、一点上をただひたすらに歩いていた。男にとって一点は線のようにも感じられたし、その上をただ歩いてたし、徘徊しているに過ぎなかったのだ。男は唸り声をあげた、どうやら眠っているようにも見えた。体を揺すっていた。貧乏ゆすりをしていた。何かを吐き出そうとしているようにも見えた。貧乏ゆすりが体内にある不純物を吐き出させた。男は吐いてしまった。吐いたように見えたのだ。吐き出した物があるわけではないように見えたし、香りもそのことを知らせなかった。しかし、男は吐いている様子だった。その状況はしばらく続いたし、男は目に涙を浮かべた。それでも貧乏ゆすりを男はやめる様子はなく、ただ痙攣をしているようにさえ見えた。男は吐く行為をやめた。意図してやめたのだ。男は意図して吐いていたし、自らが操縦していた。男は自ら貧乏ゆすりをしていたのだ。そのことを男は知っているように思えたし、今となっては微笑みながら私を見ている。それでも男は一点だけを見つめていたし、私自体を見ているとは到底思えなかった。私の中にある一点を見ているように見えたし、それを男は話さなかった。私は男に一点を見つめられた。そのことで体が動かなくなったし、動こうとも思わなかった。それに悪い気もしなかったのだ。男に私は身を委ねていたのだ。私はただ、男の部屋の中で呆然と立ち尽くしていたし、この状況に違和感すら感じることはなかった。ここは確かに男の部屋であるし、私の部屋でもあるような気すらしたのだ。それは確かなことではなかったし、私はそのことを確かめようとも思わなかったのだ。男は一点を掴んだ。捉えたのだ。その一点の香りを嗅いだし、触れることで安心しているようにも見えた。男は一点をただ撫でていた。私も一緒に撫でようとしていたし、実際には撫でていた。私も確かに一点を撫でたのだ。そのことは男が知っているようにも思うし、私は男にそのことを一任した。委ねていたからだ。私は男から離れていることを知っていたいし、いまはもう男は部屋の中にいるし、私は街灯に照らされていた。まだお昼だというのに街灯は点きっぱなしであったのだ。

 

f:id:mizokoji:20170725140243j:plain

蒸し暑いのー。