創作と探検の日記。

文、絵、歌、布など自給しています。

20171031

夢自体

 夢自体になり、得ることができるはその多幸感である。思考が止まるのではない。どこまでも広げること、拡張することが出来た。思考という枠すらも飛び越え、その体内、身体という制約をも超えて、夢自体になることで、何もかもの苦しみから脱獄を可能にする。彼は自らがその麻薬を作り出すことを知っている。自らの体内からその成分、分泌を可能にすることを知っているのだ。彼が目を覚ますとまた身体が襲ってくるのだ。身体自体が彼の飛び散り、浮遊するその彼自身、蒸発した彼を体内へと押し戻すのである。現実は重たく、また固い。目が覚めた時に襲われる絶望とはそのことであるようだった。身体および肉体から完全に乖離した状態を生み出し、重い軽いといった状態すらもそこにはなくただ浮遊する、どこまでも拡張するその思考の抜け道、この身体から発せられる何もかもを夢自体になることで生み出す。夢を見てはいけない、夢を憧れのもののように抱いてもいけない。日常として夢になるのだ。夢と混ざり合うことだった。あの何もかもから解放される、どこまでも広がる、なんの制約をも生み出さない、その抜け道を見つけ、抜け出し続けることなのである。するとまた現実に引き戻されるのだ。まるで後ろ髪を引かれるように現実へと一瞬で引き戻される。それは至極、まっとうで、自然な行いであったが、彼はその度にまた絶望を繰り返す。「眠っている間だけが何もかもから解放せてくれる」Cはそう言った言葉を幾度となく述べている。外出するにもパジャマで外出するし、どこでも眠ることができるようにと準備をかかさなかった。Cは明らかに衰弱していたがそのことを周囲に余地させることはなかった。その日も子供や妻といつものような日常を送っていた。しかし、その日Cは自らの頭にショットガンを撃ち放ったのだが、彼の行動について真実は記載されていない。手紙からもそれが真実であるかどうかを読み取ることが出来ないのだ。

 

コンクリート

 長い髪をなびかせている。金髪に少し黒髪が混じっている。目は青い。鼻は私に比べると幾分か高い。男だった。彼は髪の毛をなびかせながら、ボロボロのジーンズと便所サンダルのような薄汚れたサンダルを履いてコンクリートを歩く。男はコンクリートの地面にしゃがみ込み、割り箸を取り出すと、カッターで器用に先を尖らせた。その割り箸をコンクリートを削り取る道具として、今まさにその尖った先でコンクリートを抉りとろうとしている。周囲はその男に驚愕し、警察に電話するものものまで現れた。誰も男に同調しようとはしない。男はただ、コンクリートの下にいる、その地面、本来の地面、土の声、その踏み心地を懐かしみ、土こそが人間本来の土壌を作り出すことを知っていたのだ。あたりに警察が集まり始め、男を取り抑え始める。男は抵抗することはなかった。ただ警察の指示に従った。荒ぶれ得る様子もなく、冷静であった。むしろ興奮していたのは警察の方であった。何か、その光景は警察の隠蔽が明るみに出始める光景であった。そのことに気づく住民はいなかった。むしろ金髪の男に白い目を向ける始末である。警察を賞賛。この街に突如現れた異物の排除に手を貸したことを、またいつも通りの平穏な日常が訪れることを喜び合った。抱き合う者もいた。「とんだきちがいが現れたもんだ」と暴言を吐くものさえいた。もう手遅れだったのだ。ただそれだけのことだったのだ。

 

K

 彼は内面の描写を試みているが、内面の奥にある風景について描写を進める。キャンパスやパレット、絵の具すらも必要ではなかった。何も持たずとも描写を進めることはできたのだ。彼は自らの言葉に嫌悪する。それにもかかわらず言葉に依存するように、どこまでもどこまで描写を続けるのである。その矛盾した言葉との関係に終わりなどないのだが、彼は幾度となく終わらせようと考え始めるのだからたまったもんじゃない。彼には言葉は備わっていないのかもしれなかった。ただ現れた呪術師Kは彼の体をしびれさせた。彼はいつものようにまくしたてるような話し方をするが、そこには他人との対話、すなわち対等な関係性が含まれており、一種のパフォーマンスであることを読み解くことが出来た。彼はKが近寄ってくることに気がつくとKの目を覗き込んだ。彼はベッドの上に横たわってた。病院であったのかもしれない。白いカーテンが四方にかけられていた。ベッドも白く、手すりのようなものも周りに備え付けられている。Kはベッドに横たわる彼を見ると、ただ彼の身体に侵入を試みたのだ。Kは10秒ほど彼の体の中へと侵入し、何事もなかったように排出。またKの姿を現したのだ。「これが呪術だ」とKは一言だけ口にした。Kは何かを教えるだとか、手伝うなどそう言った考えを持たない。体感させることのみを価値があるものとして取り扱うのだ。Kは彼にその体内を通り抜ける、侵入する際に起こる、あの痺れを体感させることで満足感、多幸感を得る。Kは誰かのためにと言いながら自らの満足感のためにのみ行動を起こす。彼自身もまたその一人だ。お互いが混じり合うことはないが、ただ理解はしあえるのかもしれなかった。出会うことはないのかもしれないが、いつもどこか深い、そのつながりと言えるような場所で出会っていると言えるのだ。彼は目を覚ますと、身体はまったく硬直し、まだKの存在が取り残されているような気さえしたが、それを追い出そうともしなかった。ただ自然と抜けて行くまでの間、身体に留めておくことにしたのだ。Kは時折、ベッドに横たわる彼の元に現れるのだ。Kは何かをしようと、してあげようという考えでここにやってこない。ただ遊んでいるだけなのだ。痺れさせるためだけに現れる。「嫉妬しろ、嫉妬しろ。作れ、作れ。」それだけをなんども言い放つのである。そしてKは病室を後にするのだ。Kは医術にも精通していたが治療をしようとする気は一切なかった。「治療などする必要がない。医術が治療というならそれは悪である。お前を治すところはどこもない。いいから嫉妬しろ、いいから作れ」病気であると自白する患者たちに対して放つのはこの言葉のみであった。「治す必要がない。何を治す必要がある。治す必要があるとするなら、ここにくる必要すらないと思っている奴らだろう」とKは言った。

 

 

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夢自体になっている状態を、作ることで生み出そうとしている。

ある意味で医療であり、医術的である。

 

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溝井孝司(Koji Mizoi)

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