創作と探検の日記。

文、絵、歌、布など自給しています。

20171215

チョコケーキ

 「君が食べたチョコケーキはどこへ行ったの?消えてしまったの?それともまだ一緒にいるの?君はチョコケーキを食べてしまったし、もうないと思っているのだけれど、僕からしたら、君は今チョコケーキの存在を確かに感じているように、そう感じれるんだ。だからって何も君のことを調査する気もないし、これは質問に過ぎない。子供が抱く純粋な疑問のようなものかもしれない。食べてなくなってしまったものが、お腹の中にいる。なくなったはずなのに確かにお腹の中にいること、入っていることを感じていること。これは海の音みたいなものかもしれない。風に揺れる森の声かもしれない。僕たちはいつの日も耳を傾けている。忘れているだけなのかもしれないよね。空を見上げれば星は広がり、空が真っ逆さまに。僕たちが考えている上下はいつだって逆転する。どちらも上下であるし、僕たちはあまりにも曖昧なことを確信し過ぎているのかもしれない。あまりにも正直に鵜呑みにし過ぎているのかもしれない。あまりに安易に信用し過ぎているのかもしれないんだ。だからと言って僕が今君に話していることが正しいなんてこともないし、これは僕の真実であり、君のとっての真実はまた別なのかもしれない。ただ同じように感じていることがあるかもしれないし、全く別の意見かもしれない。つまりね、僕たちに全く同じことはないと言うことなんだよね。共通点なんて存在しない。ただ類似しているだけであるんだから、そんなものを探す必要もないし、そんなことを聞く必要もない。ただ自分自身に内包された真実を探求し続けることなんだ。それが君にとっての学問であるし、君自身が学問なんだよね。僕たちは理論でどうこう言える相手ではなかったんだ。一人一人が理論で規則で法律でどうこう言える相手ではないんだ。しかし、彼らの中にはしっかりとした理論が存在しているし、それは独自性なのだと僕は思っている。独自性を理論づける必要性はなに?ただその音楽に耳を傾ければいいし、演奏者にひとつひとつその音の解説を演奏中にはしないし、そんなことしていたら音楽自体にはなれないだろう。僕たちが今重要なのは音楽自体になることだし、溶け合うことだ。混ざり合い、蒸発し、自らの内面に入り込むことなんだ。必要なのは勇気だけだ。意見でも参考書でもない。自らの内面にある空間、内包された何もかも、一貫性のなさ、分裂することを恐れないことだ。共存すること、皆が各々で調和し続けること。それは手を動かすことであり、歌を歌うことであり、楽器を演奏することであるのかもしれないし、語り合うことであるし、深め合うことであったし、人自体を尊敬することであったんだ。」

 

所有

 今彼の中で取りざたされているのは〈所有〉という問題についてであったし、どうしてそれが自分のものだとか言い張ることが出来るのであろうか。そうでありながら自分自身の物を奪われているような気分になり始めているのだから、たまったもんじゃない。共有財産、公共物、彼が持つものはどこまでが彼のもので、どこからが彼のものではないのだろうか。そんなことに頭を悩ませているのだ。彼が所有を始めたのはおそらく幼少期からであり、抱えていたぬいぐるみがそうであったし、これはあなたの物であると物に名前が書かれたこともまた始まりだ。そうしてこれは自分の物であると大事に扱うことにするのだが、どうもそれは他人と同じように名前を貼り付けた物に過ぎなかったのだが、それだけでもこれは自分の物だとそう考えるのだ。しかし実際はどれも同じように見えるし、彼の物を我が物顔で使う人が出てくる。これは自分の物のはずなのにどうして勝手に触るのかだとか、どうして勝手に使うのかだとか、そういう風に自らの所有物を扱われることに嫌悪しはじめているのだが、そのことはもう昔から始まっていたのだ。使われたくないし、触られたくなかったのである。それが自分のものであるとそう示しているのである。しかしそれは誰でも貸したくないとか、触られたくないとかではなく、心を許す人には気軽に貸すこともあったし、触られること自体を嫌悪することもなかったのだ。彼は自らのパーソナルスペースを保とうとしているのだろうか?物を使って?所有することで?教育上はまったく全員が同じような物を使う。それなのに、これは自分のものだと言い張ることはできたのだろうか?名前があればそれは自分のものだったのだろうか?親が買ってくれたものだったら自分のものだったのだろうか?彼はカバンの上に物を置かれた時、彼はその置かれたものを投げ捨てるようにどかすし、怒りを露わにするのだ。「俺の物の上に、お前の物を置かないでくれ」と。同一化されることに嫌悪しているのだろうか。上に乗せられたことに嫌悪し、怒りを露わにしたのだろうか。それとも自らのスペースに土足で踏み入られたような気分になったことに嫌悪したのだろうか。そのことについて自分自身が繊細すぎるのだろうかと、彼はまた頭を悩ましているのだ。

 

忘却

 「君はまた体裁を気にして人を忘却すんだろうね。」と、Kは言った。「君が兄弟をそうしたように、家族という小さな組織の中でもそうしたように、これまで何人もの人間を忘却、暗殺してきたんだ。僕は知っている。そのことを見ていた。この目に焼き付いていた。様子がおかしい人とは距離を置いていたし、誰も救おうとはしなかった。君は自分の保身が何よりも大切であったし、一人なることを誰よりも恐れていた。僕は知っている。そのことを聞いていたから。だからこそ君は自分自身を殺すことに専念しようとしたし、それがうまくできなければ落ち込み、時に暴動を起こしていた。罪のない人間を気にくわないからと言って殴ったし、反逆されないのをいいことにそれを来る日も来る日も繰り返していたんだ。君自身の弱さを隠すために。満たされないことを他人のせいにし、どうしていいかもわからないその感情を、他人にぶつけることしかできなかったんだ。それはもう隠すこともできないし、もう明るみになっている事実だ。逃げも隠れもできないのだろう。君が、君たちがひた隠しにしてきたその弱さは、もう明るみに出ている。どんなに強がろうと、どんなに自分を大きく見せようとそれはもう手遅れなんだ。そんなことをしても何の意味もないことだ。僕には隠すことはできない。そのことにもうすでに幾度も触れていたからだ。何度も、何度も、目の前で味わってきた。僕は決して許すことはないだろうが、争うことはしないだろう。ただ自らの中で対峙しそれを元に錯乱を始めるだろう。そして動き始めるだろう。手が僕を動かすだろう。声が体を響かせ、癒し続けるだろう。文字はいつだって現れるだろう。止まろうとなんてしない。永遠に生産し続けるだろう。忘れるな。それが君の根源だ。それが君の弱さだ。そのことを決して忘れるな。」

 

 

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曇り空。

太陽がないと部屋の中は冷えがち。

 

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溝井孝司(Koji Mizoi)

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