創作と探検の日記。

文、絵、歌、布など自給しています。

20180112

飛んだ、跳ねた

 飛んだ、跳ねた。追いかける、追いかける。小さな女の子が飛んだ跳ねた。赤いワンピースを着た女の子。女の子はおかっぱ頭だった。踊る踊る。ハンカチを片手になびかせながら踊る踊る。スキップしながら飛んでいく。ニコニコしていた。追いかける追いかける。どこまでも行ってしまう。気づけば随分遠くに行ってしまった。足を止めた。私が足を止めた。もうすっかりいなくなってしまった。丘の上にいた。大樹が一人で立ち尽くしていた。不満は漏らさなかった。私が漏らしていた。多くの不満を私がもらしていた。悪ぶれるそぶりもなく私は不満を漏らし続けていた。誰も聞いていなかった。だからより一層大きな声で不満を漏らした。時々見知らぬ人が振り向いたが、知らん顔されたり、怪訝な顔を突き返された。私はその表情を鮮明に記憶し、鏡の前で真似をする。同じように、あの顔と同じようにまた不満を漏らすのだ。うるさいだとかマナーがなっていないだとかそういう顔だ。私はその顔のことをもうすっかり覚えていたし、何よりもまずい空気が私を取り囲んでいた。あの表情の周りにも同様にまずい空気が取り囲んでいた。大樹はそれも吸い込んだ。大樹は良い悪いの判断をしない。空気は空気だった。二酸化炭素二酸化炭素なのだ。たとえ誰が吐き出そうと、差別することなく吸い込んだ。それが森の心地よさなのかもしれなかった。しかしきっとこの大樹にも大きな負担をかけているのではないかと私は気がかりになり、不安になった。私の責任なのではないかと大きく落ち込んだ。大樹は何も言わない。その無言が余計に私を責め立てるのだ。申し訳ない、申し訳ない。そんな念が立ち込める。私にまとわりつき、体内に充満していく。満ち満ちた時もうそれは口から、穴という穴から漏れ出るしかなく、次に私は不満ではなく、その不安を口に漏らした。口から漏らした。漏れ出た。それは便の状態にもよく現れたし、あまりよく出なかったと思えば、突然に下したりした。そういう状態が私の中で繰り返され続けていた。咳が出る。風邪をひいたのかもしれなかった。きっと邪念がそうさせた。そうやってまた不満へと変換させていく。何らかのせいにして過ごす。私は悪くないと決めつけて、場合によっては自らの器官へとその罪をなすりつけるのだ。もっとも凶悪な犯罪だろう。隠蔽はいつまで続くのだろうか?もう隠し通すことも出来ないだろうに。罪をなすりつける。器官へと。次はどこのせいにするのだろうか。消化が悪いだとか、喉が痛いだとか、手先が冷えるだとか、それを起こしているのは私自身だというのに、また器官に罪を擦りつけるのだ。

 

ひと段落

 「これでひと段落だよ。」Kは言った。「これでひと段落。君はまだそう思っていないかもしれないし、今もまさに不審そうな顔をして僕のことを見ているけれど、これでもう落ち着いた。あとは経過を見るだけなんだ。それなのに君はきっと他にも問題があるはずだと言った表情で僕のことを見るが、僕の仕事は君の言っていることに近しい症状の病名をつけることではないからね。もちろんある程度の判断として持ち合わせてもいいかもしれないが、だからといって薬漬けになってはいけない。楽なのは一時さ。その一瞬のためだけに身を投げ捨てることもないだろうに。だって君はもう自覚しているからだ。どれだけ楽になることを求めたところでそれは君の人生ではなくなるってことだからね。君は生み出し続けるのさ。だから必要なのは苦しい時でも続ける、動き続ける、行動し続けるというその反復運動なのだと気づいている。重たさだとか、この空気の重圧だとかそういうことを嘆いていても仕方ないことを知っている。それにそれらに馴染むことが大人になることでもないことを知っている。勝負ではない。勝ち続けなくていい。負けたって気にしないことだ。その勝ち負けは結局同じ、平行線上のことだから、君はミルフィーユの層みたい、あちらこちらを行ったり来たりするだろう。そうなってくるともう勝ち負けという概念自体が、戦争自体が、武力自体がおかしなことであると理解できるだろうし、それでもその武力は無くならないとも思っている。だって君自身があの多くの武力と何ら変わりないと考えるからだ。だから君は内面で暴動を起こし続けている。君は少し優しすぎたのかもしれない。繊細すぎた。しかし、それを嘆いても仕方のないことだ。内面の争い、あの暴動に自ら入り込むことだ。それは苦しみなのかもしれないが、それこそが生み出されるために必要な通過儀礼のようなものだから、君は素直にそのことを受け入れ始めているのかもしれない。君の表情はそうではないのかもしれないが、僕には分かる。これはただの僕の見解であるし、君が処方した文面であるから、どうぞ一読して見てほしい。」

 

走って

 走って走って走って、息が切れて、呼吸が乱れ、もう限界だというところでパーン!と破裂音。肺が破裂したのだろうか?ただの効果音だろうか?音声さん、もう一度確認お願いします。今のは効果音ですか?それとも私の肺が破裂したのでしょうか?音声さん、もう一度確認お願いします。そしてまた走っていた。走ることを止めなかった。苦しいからと言って立ち止まってはいけなかった。これは強迫観念なのだろうか。作り上げたものだろうか。経験がそう言わせているだけではないのだろうか。そうだとしたらこの経験は10代のあの多感な時期に起きた数々の暴動だろう。しかし自らその場にいたのだ。高いレベルだとか、上を目指すだとかそういうことを自分に押し付けていたのだ。それなのにことをややこしくしたのは彼自身だった。チョコレートを口に含み、甘い香りが口中に、そして肺まで伝わっていく。口についたチョコレートを溶かすように温かい紅茶を流し入れる。残ったチョコレートが口から剥がれていく。そうやってまた帰っていく。家は変化していく。縮小に次ぐ縮小。街を出ていくことを余儀なくされたのだ。転調した。だからそのまま流れた。全く違う物語が同時並行で流れ出す。同時並行で繰り返される。今まさにこの瞬間に入れ替わり、その瞬間に遥か彼方にいたはずの私は死に、ここで生きる。そうしてここにいたはずの私も死んでいくのだ。今はどちらも死んでいて、まったく違う点に私は存在。そんな風に点在し続けている。

 

 

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 自分への処方として書けばいい。

 

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溝井孝司(Koji Mizoi)

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