創作と探検の日記。

文、絵、歌、布など自給しています。

20180114

灰色をした風

 灰色をした風がどこかで待っています。探さなくちゃ。探さなくちゃ。「何を探すの?風?それとも色?それは見つかるものなの?」きっとあるから探さなくちゃ。だからといって走り回っちゃいけないし、だから何度も何度も色を重ねて、塗り合わせて、気づいたらそこにあるの。私はそうやって出会っていた。反復運動だったのかもしれない。思考回路が違ったのかもしれない。それらが通り抜けて行く、風の抜け道が各自用意されていた。私は追いかけた。風に追いつこうとした。あの灰色が欲しいと思った。あの風が持っていた灰色が私は欲しかった。そうしてキャンパスへその色を塗った。探そうとしていた。まだなかったから重ね合わせることで私は風になろうとした。あの色になりたかったのかもしれない。でも確かに見つかるの。確かにそこにあるの。何度だって見つけることができたし、すぐにいなくなった。それを何度も繰り返していた。私が忘れていたのかもしれないし、そのこと自体も覚えていないのかもしれない。すっかりもう切り離されていた。これらは私の色ではなかった。私が持っていた色ではなく風が通り抜けていった後に出来た色だった。音色だった。穏やかだった。静かになった。静寂の中にいた。森だった。ただ木々が揺れていた。葉先同士が擦れ合って、花が咲いたみたいだった。そこには確かに花が咲いていた。冷たい風が吹いた。私は体を縮めた。悲しいとは思わなかった。ただ少し寂しかった。私はそういう気持ちの部分を口に出していた。風に、あの木々に。そうやって私は感情を吐露し、楽になろうとしていた。風はその感情を運んでくれる気がしたし、木々は感情を受け入れるように相槌を入れてくれているとそう思った。だから私は頼ってしまった。彼らに頼った。そうすることでしか私はもう、私の中にある感情、例えばそれは苦しさだったり、辛さだったり、そういうことで固まってしまった私の体を和らげてくれるとそう思った。そういう行為を彼らはいつの日も無償で行ってくれた。お金を出せとは言わなかった。そうやって私に寄り添ってくれた。だけどそんな私を私は傲慢だと思った。図々しいとすら思った。嫌な奴だと思った。顔も見たくないと思った。だから鏡を退けた。どうしても私の姿を見ることが、私にとっては苦痛だったから。私は移動させた。その行動に呼応した。彼らも呼応したの。私は私の姿がもうすっかり見えなくなってしまったけど、彼らの鼓動を感じることが出来た。私の中に根付いていた。私は逃したくなかった。だから追いかけたの。出来れば私の手の中に収めておきたかった。それらは私にとっての宝物だったから。どうしても逃したくなかった。行って欲しくなかった。惜しかった。行ってしまうことが惜しかった。だけど結局帰らなくてはいけなかったのは私の方だった。彼らは帰ろうとはしなかった。ただ気まぐれに私に呼応していた。私の方が、私の方が求め始めたのに私は都合が悪くなると自らそれらを手放し帰って行くことになる。私は嫌悪した。そのことにも、その不自由さにも私は嫌悪していた。どうして嫌悪する必要があったのだろうか?許可が必要だったのだろうか?彼らと触れ合うことに許可が必要なのだろうか?親の?上司の?役所の?国の?私は許可を得ようとしていたのかもしれなかった。それらを得たところで私の気持ちが変わることはなかった。吐露しようと思った。しかしうまく出来なかった。言葉がそれらを邪魔したのかもしれない。私は今もこうやって自分の口、喉、それらが発する音、そして言葉のせいにする。それらが誰を苦しめるのか、いや彼らは苦しめようとはしない。あくまでも私が私を苦しめているだけなのだ。彼らは私の思惑通りに何の不満を漏らすこともなく、ただ受け入れ、それも素直に実行を繰り返してくれていた。私はそのことを嫌悪するの。最低でしょう?私が私に対して行ったこの行いにすらも私は嫌悪し始めるの。

 

すとんと落ちた

 すとんと落ちた。どん!と大きな音を立てて私の前に立ちはだかった。それらの壁は年々変化していく。落書きだとか、風が運んだ砂たちによって削れて、色も変わり、そうやって独特の風合いを作った。私はその壁を壊す気にはなれなかった。いっそそのまま押し進めてやろうとも思った。どうしてこうも乗り越えることだとか、壁を壊すだとか乱暴な表現が横行するのだろうか。それらの先にあるのは、ただきっと私たちの感情の当てつけであるのだから。それなのに、それなのにきっとまた何も言わない。何も言わずに崩れ去る。砂はそう答えた。砂たちはそう答えた。俺たちは傷つけた。私たちもそう。そうやって多数声が溢れ始めた。氾濫し、洪水を起こし私を飲み込んだ。流れた。流されたと言った方が妥当かもしれない。意図してはいなかった。イエス。イエス。イエス。ノーとは言わない。ただイエスが横行していた。前向きに見せかけたイエスが。私は後ろめたい気持ちを隠すことが出来なかったのだ。この後ろめたさを持ちながら進むしかなかった。なかったことになどどうしてできようか!そんなことを許していいのかが私は判断が出来なかった。そもそも今起き上がるかどうか、立ち上がるかどうか、私自身を動かすこと自体の判断すらも難しくなっていた。誰かの言われた通りにした方がいいのだろうか?言われた通りにすることしか私には出来ないのだろうか?そもそも私に誰が指示を出しているというのだろうか。ただ聞こえていたから私は指示通り動いていたのかもしれなかった。大きな声が駆け回っていた。多くの、大多数の空虚な声が行き場を失って空中分解。散って、散って、あの時の花火みたいに。煙になって、私たちの目の前を覆った。前が見えなくなって、私は行き先を失って、戸惑って、立ち尽くし、そうやって気付けば立ちあがっていた。私は声とともに立ち上がっていた。彼の声に乗って。ああそれなのにまたどこか遠くへ行ってしまった。見失った。黄昏た。舞い上がった。私は追いかけた。目で、この目で何とか追いかけようとした。体は動かなかったから、何とか目だけは追いかけた。きっと忘れないようにしようとした。忘れてはいけないと思ったからだ。この感情だけは忘れてはいけなとそう思ったのだ。私は溶け合っていた。この空間と、音楽と、そして目の前にいる彼女と私は溶け合った。そして一つになった。

 

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最近、陽が落ち始めたくらいの方が文が書きやすい。

 

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溝井孝司(Koji Mizoi)

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