創作と探検の日記。

文、絵、歌、布など自給しています。

20180117

球体

 大きな大きな球体が空を覆うように現れて止まってその場で揺れていた。灰色をしていた。湿っているようだった。窮屈そうだった。何かたくさん、たくさん抱えているようだった。時折白くなった。隙間から白く漏れ出す光が現れた。眩しかった。その光を追いかけた。また追いかけた。ゆらりゆらり。目の周りを光が泳いでいた。煙が立ち込めた。煙草の煙だった。吸わないように息を止めた。それなのに、それらは衣服に付着して離れようとはしなかった。改めて嗅いだ。また嗅いだ。まとわりつく匂いにすっかり慣れてしまって、もう匂いを追いかけることが出来なくてうんざりしていた。あれやこれやとうんざりしていたのだ。きっと君もそこのあなたもみんなそれぞれ言いたいことを言うんだろう。それで良いじゃないか。それで良いはずなのにそれはとても重たいことだった。ストレートな言葉に怯えていた。あまりにそのままを捉えてしまい、それらの言葉に大いに傷ついていた。もうそうではない素ぶりをするには限界があった。傷ついて、傷ついて、立ち直ろうとその傷を隠していた。隠し通すことは出来たのだろうか。きっともうすでにバレていた。何もかも。隠し通そうとしものが、それが映像で、実際に目の前に現れた。だから何もかもが混同して、夢と現実がどちらも入り混じっていて、夢で見ていたはずのこともまるで現実で起きていたように捉えて、一体どちらが本当だったのか、真実だったのかと問う。そんな疑問自体が馬鹿げたことなのかもしれない。そんな疑問を抱くこともないのかもしれないが、それなのにふとした時に流れ込んでくる。あの声が。あの女性の声。歌っている。聞き入っている。相変わらず空は灰色で覆われていた。雨が降ってきたようだった。傘をさして、雨に濡れないようにした。傘を持っていたからだ。右手に傘を持って、左手には大きな袋を持って雨の中を歩いていた。甘いココアが体の中に染み入って、少し口に甘みが残った。それらを流すように水を口に含んで、甘みを和らげた。駅前では警察が何か監視の目を光らせていた。2名体制だった。警棒を持って仁王立ち。改札から出てくる人はそれらを避けるように歩いた。左右に散らばるように、まるでそこに壁でもあるかのように。どうして隠れる必要があるのですか?堂々と立っていれば良いのに。どうしてあなたたちはそんなに曲がり角のところで隠れているのですか?どうして堂々とそのように道の真ん中に立とうとはしないのですか?不正を起こさないようにすることが仕事ではないのですか?不正を起こした後に現れるのはなぜですか?どうしてそこに隠れているのですか?不正が起きた瞬間に大きな騒音を鳴らしてあなたたちは駆け回ります。どうして隠れているのですか?どうしていつもいつも隠れているのですか?どうも順序が違うように思えるのです。そうやって点数だとか、罰金だとかを稼いでいるのでしょうか。そんな商売ならしない方がマシでしょうに。

 

程遠く

 「私は自由だと言うほどに自由とは程遠くなっていくのです。」Kは言った。「どうしてもその自由だという言葉が出てきた時にそれらは大変不自由なものに思えてならないのです。それらはまだ不完全な自由であり、まだ自由に至っていないのだとそう思います。それよりもそこまで自由というものが必要なのでしょうか。どこまで自由を追い求めるのでしょうか。私は自由なのではなく、自由の奴隷なのです。そう振舞うことの奴隷なのです。来る日も、来る日も向かっていくのです。そして踊っています。来る日も、来る日もキャンパスに向かうのです。紙の前に座るのです。そして新しくやってきたあの椅子に。神と対峙しています。そうやって自由とは何かと対話しているのです。その行動から自由が生まれるのです。その瞬間に一体となり、私は夢と一体となり、何もかもと融け合うのです。私はその瞬間に起こることを紙に留めておくことが出来ないかと不自由に考えてみるのです。いつまでもいつまでも。そしてまた動き始めて、目の前に積み重ねられた衝動に目を向けるのです。しかしそれは衝動的というよりはあまりに内向的だった。あまりに緻密だったのです。大胆でも、繊細でもなく、あくまで内向的であり、その流れに沿ってただただただ動く。その一つ一つに意味があったのかもしれない。そうやって何かが出来上がっていく。今はそれらの情報を一体処理しきれるかも分からないその情報と向かい合って、なんとかキャンパス或いは紙に定着させようと心がけるのです。」

 

 壁、森、風に揺れる枝葉、ヘッドホン、白いシャツ、アヒル、穏やかな声、雨音、手織りのストール。それらに囲まれている自然の中で、彼らが見出そうとしているものは一体なんだろうか。この記録は鮮明に起こる、例えばあの風の色、匂い、停止位置に至るまでも数字によって管理されていた。それでいて彼らは大まかな性格だった。細かいことは気にしなかった。それらは大きな問題ではなかったからだ。単縦であったのだ。発生源をこれ以上探ろうともしないし、追及しようともしなかった。ただ生み出されている、作品群に囲まれ、囲まれ、囲まれ。自己主張。俺が、俺が、俺がと自己主張を繰り返す。「ここにいる。ここにあった。俺たちはここにいた。あの時も、そして今この瞬間も。」声高らかに語りかける。大きな声でどこまでも届かせようとする。怯えてはいなかったし、後ろめたさもなかった。ただ単に、それが彼らだった。その中に時折混じっていた。風のように通り抜けていた。その途中で彼らに出会い、彼らと寝食を共にしていた。その時間が確かにあったことを覚えていた。あれは違うブラックバードだった。彼にとってのブラックバードだった。馴染んでくるものとそうでないものがあった。それらはいつ彼ら自身に成り替わるかは分からない。いつの間にかなのだ。気づいた時にただそうなっていた。気づいた時にはもう取り返しのつかないことになっていた。だから後戻りはしないのだ。かといってプレッシャーになるものでもない。その都度、道は開拓される。後戻りしているようなことが果たして後戻りと言って良いのだろうか。それらはしっかりと積み重なって、積み上がり、どこまで高く高く、それらは少々見えづらい。それでよかった。そんなの見せびらかすものでもないのかもしれない。

 

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今日は暖かい。

 

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溝井孝司(Koji Mizoi)

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